はじめに
南海トラフ地震をはじめとする巨大地震リスクにさらされている日本。国や自治体の防災活動が大きな役割を果たす一方で、個人や家庭の“自助”による津波対策はなかなか全国的な広がりを見せていません。「なぜ我々は主体的に津波対策を進めることが難しいのか?」――これまでの議論を通して、その理由を多角的に考えてみます。
1. 津波対策の現状と「公助依存」の文化
日本では阪神淡路大震災や東日本大震災以降、防災意識そのものは高まってきたとされています。非常食や持ち出し袋の備蓄、避難訓練への参加率も一定の水準を示していますが、実際の津波災害時には「まず公的機関の指示を待つ」「避難も周囲の動きに合わせる」といった集団志向が根強いのも事実です。
これは歴史的な災害が多かった国ならではの「助け合い文化」が根底にあり、地域社会への信頼や公助への期待感が強いことが影響しています。
2. 主体性を阻む制度・法体系の壁
日本の法体系は自衛手段の制限が強く、護身具携帯に厳しい規制があります。米国のように「国民が自ら守る」ための法的裏付けが少なく、「安全は国が守るもの」という意識が根付く構造が生まれています。
この法制上の特徴は、防災教育や啓発活動で補強はされてきましたが、自ら積極的に生き残るための工夫――たとえば船舶用救命いかだ、ライフジャケットや浄水器、電源バッテリーなど具体的な自助デバイスの普及が伸び悩む一因ともなっています。
3. 集団性と主体性――空気を読む社会の功罪
「周囲と同調する」「出しゃばらない」─日本特有の“空気を読む”文化は、災害環境への適応として合理的でもありますが、実際には“危機時でも指示待ちになりやすい”負の側面も併せ持っています。
災害時、最も生存率が高まるのは迅速かつ主体的な避難行動、そして自分自身や家族のための対策を事前に進めている場合だとされます。ところが「周りがやっていないから」「まだ大丈夫」といった同調圧力が、個人単位の本格的な備えを妨げる要因となっています。
4. 「どれだけ備えるべきか」わかりにくさ
津波対策に必要な備えは場所や地域のリスクによって大きく変わります。
沿岸部ではライフジャケットや船舶用救命いかだや高所への避難経路づくり、内陸では水害用防災グッズなど、“何をどれだけ備えるか”の共通基準が提示されづらく、「個人任せ」になりがちです。
その結果、「自分だけ準備しても意味がない」「どこまでやれば十分かわからない」といった心理的ハードルが生まれ、主体的対策の普及を妨げる現象が生じています。
5. 主体性を引き出すためのコミュニケーションと教育
防災の専門家によると、行政依存型の防災から脱却し、住民の主体性を引き出すためには、リスク・コミュニケーションの強化と地域ごとの防災教育が不可欠です。
「自分事化」の第一歩は、身の回りの地形やハザードマップを確認し、家族や地域と避難計画や必要備品を話し合うことです。地元の防災リーダーや住民同士が日頃から意識を高め、情報発信や体験型訓練を繰り返すことで、集団内で「主体的な備えが当たり前」の文化を根付かせるとされています。
6. 何ができるか?津波セーフプロジェクト提案「自助の具体策」
- 家庭ごとに津波ハザードマップの確認
- 高所避難経路の下見と複数ルートの確保
- 津波警報時にすぐ持ち出せる防災袋の用意
- 船舶用救命いかだやライフジャケット、非常食・簡易浄水器などの実用的備品の検討
- 家族で避難手順・集合場所の確認
- 災害情報の入手手段(ラジオ・防災アプリなど)の整備
これらを「地域ぐるみ」で見直していくことが、真の意味での“自助”――すなわち主体的な津波対策の実現に繋がります。
おわりに
地震・津波のリスクと向き合う日本にとって、「主体性の壁」を越えて防災を“自分ごと”として進める時代が訪れています。
法制度、文化、教育――多様な側面から議論を深めることで、「備える人」「行動する家族・地域」の輪を広げていくことが、津波セーフプロジェクトからの重要な提案です。
参考:防災白書、公助・自助の意識調査、津波対策実践例など各種資料より


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