〜今村文彦先生と考える、第三の津波避難手段〜
結論:公助に任せきりにせず、「最後の一手」を自分で用意する
南海トラフ地震や千島海溝地震のニュースを見るたびに、「もしあの津波が自分の町に来たらどうなるのだろう」と、不安を覚える方は多いと思います。
とくに、高台や津波避難ビルが少ない「津波避難困難地域」にお住まいの方にとっては、どこかで「国や自治体がなんとかしてくれるだろう」と思いたくなるのも自然な感情です。
しかし、東日本大震災の検証や専門家の研究から見えてきた現実は、公助だけではどうしても“最初の数時間〜1日”を埋めきれない場面があるということです。
津波セーフPJは、そうした「空白の時間」を埋めるための自助の最後の一手として、「船舶用自動膨張救命いかだ」を第三の津波避難手段として備えることを提案しています。
理由①:2025年世界防災フォーラムでの監修内容
津波セーフPJは、2025年の仙台防災未来フォーラムにおいて、「フローティングデバイス普及による津波被害者数の低減可能性」について発表を行いました。
その際、東北大学災害科学国際研究所の今村文彦先生に、発表内容の監修をお願いし、特に次の点についてご評価をいただきました。
- 水平避難・垂直避難だけでは救いきれない人たちが存在すること
- 津波避難支援デバイスを「ヒト・モノ・カネ」の観点で比較評価する意味があること
- その中で、SOLAS条約(海上人命安全条約)のLSAコードに準拠した船舶用救命いかだは、費用対効果の観点から、津波避難支援デバイスとして一定の有効性が期待できること
既存の津波避難手段(ライフジャケット、津波シェルター、津波避難タワーなど)は、それぞれ優れた点を持つ一方で、コスト・設置場所・運用などの面で「広く普及させる」ことには課題があります。
一方で、船舶用救命いかだはもともと国際条約のもとで設計・運用されてきた装備であり、
- 高い浮力と安定性
- 自動膨張機構と短時間での展開
- 多人数収容とコンパクトな収納性
- 厳しい環境条件(温度・波・紫外線など)での使用実績
といった要素を備えつつ、相対的に導入コストが抑えられる点が評価されました。
津波セーフPJは、この監修を受けて、避難手段を次の三層構造で整理しています。
- 第一層:揺れたら直ちに「高台・津波避難タワー・指定避難ビル」へ向かう(水平+垂直避難)
- 第二層:地域ごとの津波シェルター・高層建物等の活用
- 第三層:それでもどうしても間に合わない・動けない場面に備えて、「その場で生き延びる」ための「最後の一手:船舶用救命いかだ」
公助を前提にしつつも、「最後の一手を自分で持っておく」ことが命をつなぐというのが、津波セーフPJの出した結論です。
理由②:2026年公開収録ラジオで語られた「津波の速さ」のリアル
一方で、2026年3月14日の仙台未来防災フォーラムでは、今村先生が公開収録ラジオの中で、より一般向けに分かりやすく津波の性質を伝える場面がありました。
そこで出てきたのが、印象的なクイズです。
陸上に上がった津波の流れの速さは?
1秒間に1メートル/10メートル/100メートル のどれか
多くの方が「100メートル」と答えたこのクイズの正解は、「1秒間に1メートル」でした。
一見「遅く」感じられるかもしれませんが、これは人が歩く速度と同じくらいであり、河川の洪水でも人が流されるレベルの水流です。
重要なのは、「津波はジェット機並みの速さ」という有名なフレーズが指しているのは“波の形が海を伝わる速さ”であって、私たちの生活空間で襲いかかる“水の塊そのものの流れ”とは違うという点です。
- 波の伝わり方は非常に速い(遠くの地震でも短時間で津波が到達しうる)
- しかし、陸上で私たちを押し流すのは、水の量と持続時間がもたらす力
このギャップが、「まだ間に合うだろう」という正常性バイアスを生みやすくしています。
津波セーフPJは、このクイズでの説明と同じく、「津波が“見えてから”ではなく、“見える前に動く”」ことの重要性を、記事やコンテンツの中で繰り返し伝えています。
具体策:第三の津波避難手段としての「船舶用救命いかだ」
では、公助の限界と津波の性質をふまえた上で、私たちが取れる現実的な備えとは何でしょうか。
津波セーフPJが提案するのは、次のステップです。
- お住まいの地域の津波ハザードマップを確認し、
- 実際にその場所まで徒歩で移動してみて、所要時間を体感する
- 高齢の家族が一緒でも間に合いそうか
- 夜間や悪天候でも移動できるか
- 「どうしても間に合わない可能性がある」と感じた場合は、
船舶用救命いかだは、もともと海難事故から命を守るための装備として、国際的な安全基準(LSAコード)のもとで設計されています。
津波避難支援に転用する際も、
- 高台や屋上に設置しておき、「最悪の場合にはそこで浮かびながら救助を待つ」
- 災害時要配慮者施設(病院・介護施設・学校・保育園など)で、避難完了後の“長時間滞在”と“浸水リスク”に備える
といった形で、「最後の一手」として副次的に活用できる可能性もあります。
正常性バイアスを越えて、一つだけ具体的な一歩を
ここまで読んで、「うちは多分大丈夫」「本当にそこまで必要だろうか」と感じた方もいるかもしれません。
それは、人が自分を守るために持っている正常性バイアスの、ごく自然な働きです。
だからこそ、いきなり完璧な備えを整える必要はありません。
まずは、次のどれか一つだけで構いませんので、行動に移してみてください。
- 津波ハザードマップを開き、「自宅から一番近い高台」を一つだけ見つける
- その場所まで、休日に一度だけ歩いてみる
- 家族や同僚と、「もし夜中に津波警報が出たら、どこに集まるか」を話してみる
- 自分の地域で、船舶用救命いかだのような“第三の避難手段”が必要になりそうかを考えてみる
津波セーフPJは、今村文彦先生の専門知と、現場で感じた不安の声をつなぎながら、
「津波は怖い」で終わらない、“行動につながる津波知識”をこれからも発信していきます。




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