2025年7月29日、東京都千代田区のイイノホールにて開催された「南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)完成記念シンポジウム」に参加しました。近い将来が懸念される南海トラフ巨大地震対策に向け、高知県沖から日向灘という従来「観測空白域」だった海底エリアに最新の観測網が設置され、その完成を記念して産学官民が集いました。
陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)とN-net
はじめに、今回完成したN-netは、日本列島の地震・津波・火山の常時監視を支える統合観測網「MOWLAS(陸海統合地震津波火山観測網)」の一部として構築されています。MOWLASは、防災科学技術研究所(NIED)による全国規模の観測システムで、陸域・海域あわせて2,000点超の観測点を持ち、GNSS・地震計・津波計などのデータを24時間体制で集中管理します。その中でもN-netは、南海トラフの沿岸~沖合をカバーする新設の海底観測ネットワークであり、MOWLAS全体の精度や即時性向上に寄与する重要な拠点です。N-netの登場により、今まで観測が困難だった南海トラフ広域のリアルタイムデータ取得と即時解析が可能となりました。
シンポジウム内容と実践例
シンポジウムは、防災科学技術研究所によるN-net整備の全体像解説から始まり、技術的な特長や今後の利活用、そして社会実装への期待について発表がありました。パネルディスカッションでは、N-netを活用する研究者・構築側に加えて、気象庁、自治体、鉄道事業者(JR西日本)など現場実務に携わる多様な立場からの報告がありました。
- 気象庁は2024年11月21日から、N-netが取得するデータを津波警報や注意報の発表に本格導入。高知県沖~宮崎県沖の海底地震・津波波形観測が従来より20分前後早くなり、予測精度・迅速性が大幅に向上しました。
- 昨年8月8日の日向灘地震では、MOWLAS・N-netなどのデータをもとに、気象庁から南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が即時発表され、自治体ごとに迅速な避難対応や住民への周知、津波注意報の発表や連携が実際に機能したことが紹介されました。
- JR西日本は、新幹線・在来線で一部運休や減速運転など柔軟な運行対応を行い、利用客の安全確保を優先。防災マニュアルと継続的な訓練の効果が、混乱のない迅速な現場対応に結びついたと強調されました。
所感
最新の観測網が整備されただけでなく、そのデータを最大限現場で活用する連携体制が社会実装として確立しつつあることが、今回のシンポジウム最大の収穫でした。日向灘地震という現実のケーススタディからは、科学的裏付けと初動対応の即効性、また情報やリスクを共有できる社会基盤の重要性が再認識されました。
N-netの完成は、津波セーフプロジェクトにとっても、市民の「命を守る」現場力と科学技術をつなぐ大きな一歩です。今後もMOWLASとN-netが担う観測・警報技術、それを生かす行政や企業、市民への啓発・訓練を有機的に組み合わせ、南海トラフ地震津波への備えを強化していきたいと強く感じました。















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